『スライムがこの辺りの草原に大量発生している。何とかして欲しい。謝礼は(溶かされて読めない)0000Gr』
旅の途中に見掛けた、何の変哲もない紙に書かれていたのは、このような内容の依頼だった。
「――この辺り、ね」
掲示されていた場所から一番近い村、恐らくそれが依頼主のいる村なのだろう。
私――ルピス・レイズリス――は、愛用の剣を鞘に収めて、煙突の煙があるかどうかを見渡し――
「あそこね」
旅荷物を背負い、再び歩き始めた。
「昔はそれほど多くなかったし、いる場所も限られていたんですよ。ほら、この村の向こうに、大きな山が見えるでしょう?あの麓に洞窟がありまして………えぇ。あの場所は『スライムの洞窟』と呼ばれておりまして、あそこの中でただふるふると震えて光るだけの生物だったんですよ………」
村長の簡単なもてなしを受けながら、私は村長の話を頭の中でまとめていた。
まず、かつては洞窟の中でしか見掛けなかったスライムが大量発生。村人や旅人を襲い始めたこと。
不思議と、死人は出ていないこと。
怪我させた後、精気を吸い取るので働き手が暫く使い物にならなくなるので困っていること。
そして――。
「あの洞窟のスライムは火に弱いのです」
非常に役立つ情報。相手の弱点が分かれば、それだけ探索は有利に進む――。
食事の後、私は村長に簡単に礼を言うと、前金を受け取り、家の外に出た。
洞窟の入り口に辿り着くと、私の目に飛び込んできたのは、無数のスライムが岩壁はおろか、草原まで覆い尽くしているという、逃れられない現実だった。
確かにこの量は異常と言わざるを得ない。何らかの原因が洞窟の中にある筈――。
「『トーチ』」
ボッ。
村長の家から断りを入れて拝借した薪に簡易魔法で火をつけ、私は洞窟の中へと足を踏み入れた。
驚いたことに、松明を灯した途端、周囲のスライム達はびくん、と大きく震えると、じりじりと、私から距離を取るように後退していった。――どっちが前かは分からないけど、状況的に後退でしょ。
兎も角、まるで私とスライムに見えない境界が引かれたかのように、スライム達は私に対して一定の距離を取り続けた。それはさながら、簡易式のモーセの伝説。
私は消化液を警戒しつつ、粘液に足をとられないように、怯えたようにふるふる震えるスライムたちの横を進んでいった。
「………」
改めて、どう考えてもこれは異常としか言いようがない。
「どこをどうしたらこんなに数が増えるのよ………」
私の目の前の通路、それが完全に、スライムによって覆われていたのだ。みっしりと詰まっているそれは、まるで水の膜が張っているかのよう――。
流石に待っていては松明の明かりが危ないので、私は火を近付け、スライムを退散させることにした。
「――!」
退散させたその後ろ、その通り路すら、同様の風景が広がっていた。
「――よく、奥の方は敵が強くなるとか、そんな事を聞いたことはあるけど……」
ここまで物量戦で来られると、流石の私も辟易して来るのだが。
そう思いながら、ふと後ろを振り返ると……。
「引き返す道は――無いみたいね」
何十何百ものスライムが互いに融合し、退路を塞いでいた。
迂闊だった。たかがスライムと侮ったのがいけなかった。これだけの量、普通に相手するのは骨が折れるし――無理。
試しに火を近付けてみたけど、分厚いスライム・ウォールは退く気配がない。
「………」
嫌な汗が私の背中を蛞蝓のように這い進んだ。けど――。
「行くしかないなら行かなきゃね」
私は再び、奥への道を塞ぐスライムへと、火を近付けた――。
「――!」
洞窟の最奥まで来たとき、私は思わず言葉を失ってしまった。
只の岩壁が続いただけの筈の洞窟。それがここに来て、風景が様変わりしたのだ。
大広間のような半球形の空間。仄かに蒼く光る水晶が中央に添えられ、周辺には信仰対象であろう石像が、水晶を守るように配置されていた。
壁にも、幾つも発光性の石が埋め込まれていた。
私は――この風景に見覚えがある。似たようなものを見たことが――。
「これは……教会?」
それも、普段自分達が信仰しているそれのものではなく、寧ろ――。
『貴女達の支配者が'邪教'って呼んでいる類いのものね』
「!!!!!!!!!!」
突然、私以外の声が響いた!どうして!?気配も全くしていなかったのに――!
「誰っ!?」
私は愛剣を咄嗟に抜き放ち、気配を探り直した。だが、探知できるのはスライムだけしかない。
『ふふふ……あわてないあわてないの。短期は損気よ?』
聞いているだけで、どこか神経を逆撫でされるような声。声の高さと調子から、発言者は女であることは間違いがない。
「どこだ!出てこい!」
ありきたりかもしれないが、それ故に一番効果のある言葉だろう。私は叫びながら、自分のやや波立っている心を何とか落ち着けようとした。
『ふふふっ♪』
含み笑いが聞こえた瞬間――!
ゴパァァァァァァァッ!!
「――えぇっ!?」
突然、背後から大量のスライムが流入してきた!咄嗟に回避した私の目の前で、それらのスライムは渦を巻きながら巨大化していく――!
『ふふふふ………♪』
あの笑いも徐々に大きくなり、教会の音響から多方面に反響し、脳を揺さぶっていく――。
やがて――渦の中心から、何かがせり上がり始めた!
「!?」
それは人の形だった。さらに言うならば、それは女の、それも少女の形をしていた。
初めは周りのスライム同様のゼラチン質の体をしていたが、徐々に変化しだした。
青い髪は毛の一本一本に分かれ出し、顔から首、上半身から下半身へと肌色に染まり始めていた。
「――!?」
驚愕の表情を浮かべる私の前で、変化はさらに続き、ついには足がスライムから切り離され、そのまま地面に落下した。
「――よっ……と」
地面に当たる寸前、スライムが体を膨張させ、女を受け止めると、そのまま膨張部分を切り離し、女の全身に纏わり付いた。そしてそれらは――色彩が変化し、今私が着ている服と同じそれになった。
「―――」
理解を越えた出来事。でも私は、知識としてはそれを知っていた。魔物と共生する種族、宗教、その神殿がここであるのだから――。
「『魔拝教』の徒か――!」
それは今より昔、魔物がまだ温厚だった時代のこと、人間は魔物と心を通わせ、共に生きていた、と、どの世界の教科書にも載っている。
そのような時代、特に魔物と深く心を通わせた存在、それが『魔拝教』に属する人物なのだ。
「――でも、魔拝教徒は、先の大征伐で全滅した筈――!」
「信仰対象を全滅?それは現実的に可能なのかしら?」
クスクス……と、やや人を小馬鹿にした態度で少女は笑う。少しカチンと来た――けど、まずやる事はある。
「………この辺りのスライムが急に増えたのは、あなたが原因ね」
「そうよ。全部あたしが増やしたの」
悪びれもせず答える少女。でも必要なのは態度じゃない。原因が彼女であるという、事実。
「……村人が襲われたのも、あなたが指示したの?」
少女は頬を膨らませた。
「あれは村人が悪いのよ?出会い頭にあの子達に襲ってくるんだもん。だから正当防衛よ、せーとーぼーえ〜。命があるだけ良しとしなさいよ」
当然の事だとは思っていたが、少女は人間よりも魔物の方に同情するタイプだと改めて確認できてしまい、私は内心、頭が痛い思いだった。出来れば知能がある相手とは、強行手段を取りたくないのだ。出来れば会話でお引き取り願うなり事を収束させたい。けれど、この状態だと、それも危ういかも………。
「それで、用件は何?可愛らしい騎士さん?」
「なっ!?」
可愛らしいと言われ、一瞬動揺してしまう私。産まれてこの方、一度も言われたことがない言葉だったから――。
私は頭を振って動揺を追い払い、二度深呼吸してから、用件を告げた。
「………スライムを、洞窟からなるべく出さないで欲しいの。それを貴女にお願いするわ」
本当は、スライムの絶対数を減らす事も言いたかったけど、それは交渉以前の問題だ。彼女が認める筈がない。
事を荒立てるつもりもないから、私は愛剣を手放し、床に置いた。
「――」
これには彼女も驚いたらしい。目を少し見開き、口をOの字に広げ、両手でその口元を隠してこちらを見つめていた。
静寂。破ったのは向こうからだった。
「………珍しいね、もっと高圧的に来るかと思った。今まで、大体は私を見るなり口汚く罵りながら斬りつけてくるヤツばっかりだったからね」
「私も無闇に剣を振るうつもりはないわ。必要以上の争いはいらない。話し合いなり交渉で解決できるなら、そうしたいの」
例え、『魔拝教』の徒であっても――いや、だからこそ。
相手は、言葉や常識が通じない対象ではない。完全な和解は無理でも、こちらの意図を汲み取ることは出来る筈――。
そう信じて実行した、愛用している武器の放棄は、どうやら功を賞したらしい。
少女の瞳が――微笑んだ。
「――いいわ。その約束、受け入れてあげる」
言うが早いか、少女は服の擬態を解かせると、いきなり股を開いて――!?
「ちょ!ちょっと!?何をやっているのよ!?」
服の擬態を解くこと、つまり丸裸の状態で、彼女はがに股のまま仰向けになった。いわゆるM字開脚の姿勢で、目の前の少女はその股の中心部にほっそりと入った一本の筋、そこに両腕を伸ばし始めたのだ。
「うふふ………?」
少女の表情は、既に恍惚としていた。これから訪れる歓喜の瞬間を、今か今かと待ち望んでいるかのように………。
くちゅ……
「あ……はぁ……♪」
彼女の指は、何の躊躇いもなく筋を開き、その奥にある聖地を目指し進んでいった。入り口となる桃色の肉の門は、まるで見知った客を招き入れるかのように、すんなりと肌色の凌辱者を受け入れていった。
ビクッ!ビククッ!
「はぁっ!……あぁっ!……あはぁ……♪」
入り込んだ指が動く度に、少女の体は小刻みに揺れ、だらしなく開いた口の端からは涎がつ…、と滴り落ちていく。それでも少女は、手を自分の秘所から抜こうとはしなかった。
くちゅ、じゅぶっ、じゅぷっ………とろぉ………
「あっ♪あぁっ♪ぁぁあっ♪」
彼女の手は、徐々にねばねばした液体で覆われていった。ぐむぐむと指を飲み込んでいた陰唇は、愛液をたっぷり含んだ筆となって、肌色のキャンパスに淫らな絵を描いていく――!
瞬間、空気が変わった。彼女の後ろにいるスライム、それが彼女に一気に迫り――そのまま包み込んだ!
「なっ!」
スライムが暴走したのか!?私は彼女の身の安全を確保するために、床に置いてあった剣を手に取った。だが――!
「――ぁぁぁああはぁあああん♪」
女の私でも思わず感じてしまいそうな声が洞窟に響き渡った瞬間。
スライムが、文字に表せないような物凄い音を立てて、彼女の秘部に吸い込まれていった………。
「な……!?」
私は、目の前の光景が信じられなかった。
明らかに、スライムの体積は彼女の50倍以上は確実にある筈だ。それを彼女は、自分の体の中へ飲み込んでいっているのだ。それなのに、彼女の体積自身は全く変わっていない。まるで……ブラックホールだ。
――ちゅるん
「あはぁぁ……………♪♪」
時々体を震わせながら、恍惚の表情を浮かべた彼女の膣は、やがて最後の一欠片までもを、自らの体に飲み込んでしまった………。
「……はぁっ♪………はぁっ♪………うふふ♪」
事後に出す艶っぽい吐息のまま、何処と無く焦点が定まらぬ瞳で彼女は私を見つめ――!?
「――ちゅ♪」
いつの間にか彼女は私の側へと近づき、一気に飛び込んで私のキスを奪った!呆然としていた私は、唇を閉じることが遅れ――!
「んんっ!んんんっ!」
わ、私の中に何かが流し込まれた!この位の距離では防御が出来るであろう距離から、少女は取り付き、口の中へと舌を突き出して――切り離したのだ!切り離された『舌』は、形を変えながら、私の喉の奥へと一気にその身を投げ込んでいった………。
どがっ!
「きゃんっ」
思わず彼女を、強く押し退けてしまった私。咄嗟の事で心臓はバクバク鳴っていて、吐く息ははぁはぁと上がってしまっていた。
「……っもぅ、乱暴なんだから……ふふ」
髪の毛や服についた埃をぱんぱんと叩く仕草をしながら、それでも少女は熱に浮かされたような表情で――笑っていた。
「ッ――!?」
正直に言おう。私はこの時、少女の笑みに戦慄していた。背筋首筋にひんやりとした物を当てられたようなおぞ気が、雷撃のごとく私の体を巡る――!
そんな私の様子などお構い無しの様子で、彼女は''獲物を前にした獣''にも似た笑みを私に向ける。
「ねぇ……。そもそも、交渉の基本原則って何だったかしら……?」
声が震えそうになるのを何とかこらえて、私は声を絞り出した。
「………互いの利益になるよう、調整すること――」
「そうだよね。でもさ、今さっきの条件じゃ、私は何にも得しないの、解るよね?」
「……何を望むの?」
知らず、私は愛剣を強く握りしめていた。それでも、カタカタと音を立てる剣。
少女に対する、得体の知れない恐怖感は、次の言葉で、その正体を晒け出す事になった。
「あなた」
「――え?」
理解を越えていた。私が欲しい?どういうこと?
そんな私をじっと見つめながら、彼女は彼氏に甘える彼女のような猫撫で声で、私に話してきた。
「あなたの体、頭、瞳、腕、脚、爪先、心――全てを私のものにしたいの………ふふふ?」
そのまま、じり、じりと私に近づいてくる彼女。
「………く、来るな!来るなぁっ!」
自らが汚されてしまうかもしれない恐怖心から私は、愛剣を改めて構え直した。そしてそのまま相手に斬りつける!
風切り音。切り裂いたのは、彼女の表皮のみ。そこから幽かに流れた血を手で拭き、彼女はいやらしげにそれを舐めた。
「交渉、決裂、か。ま、仕方ないわね」
それでも笑みを止めない彼女の股、そこからぽたぽたと、止めどなく流れ落ちているものがある。
愛液だった。愛液がだんだんと足元に巨大な水溜まりを形成しつつあった。
「な……何なのよ貴女は……!」
私は叫び出したいのを何とかこらえながら、恐怖を心の外に出すように、彼女に問いかけた。
彼女は――あっさりと答えた。
「あたし?」
その一言が、逆に私を恐怖の底に突き落とすとは――私も思わなかった。
「『水のライム』、って他の人は呼んでいるわね――って、あれ?どうしたの?」
「――!」
私は恐ろしさのあまり一瞬自分を失ってしまった。
水のライム。
魔拝教神官の中でも、特に能力がある人物の一人で、国家の賞金首の筆頭でもある。けど、写真の彼女は十年近く前の筈。どうして――?
「ううんっ!」
そんなことを考えている暇はない!私はどうにかして、この場を切り抜けなければならない!そうしないと――私が危ない!
「『ファイア・エレメント』!」
相手はスライムを操るなら、私はスライムが苦手な火を剣に纏わして戦う必要がある。純粋な物理攻撃力は、スライムの軟体には通用しない。精神的な体力――この場合、スライムを形成する魔力を削らない限り、勝てはしないのだ。
私は、周囲の気配を確認した。目の前にいるライムと、出口を塞ぐスライム。他はない。ただ、ぼんやりとした気配が、この空間全体に漂ってるのが気になるけど――。
(決めるなら――一撃)
出入り口を背中に置かないように、剣を構えながら移動すると、私は――!
「てぇぇぇぇいっ!」
一瞬でライムに近づくと、剣を斜に動かした。
『瞬歩』
それはあまりの速さに、相手が私の姿を一瞬見失う事から、魔法剣士の間ではよく使われる技だ。魔力を足と脚に集中させ、ハンマーを降り下ろすような感覚で足を地面に降り下ろす。魔力が起爆剤になって、弾丸のように相手に近づけると言うのが、この技の原理。
でも私の場合、生まれつきの魔力が強くて、他の人よりも長距離を、他の人より短い時間で飛ぶことが出来る。いくら相手が警戒していても、姿が消えた瞬間に逃げる事なんて、不可能ではないにしろ至難の技だ。
それに避けたとしても――!
ズバシュッ!
「!?」
私の剣は、確かに対象に命中した。命中したのだが、手に伝わる感触は人間のそれではなかった。まるで水か、それに近いものを斬り伏せたような――。
『瞬歩』を一瞬解除して、私は後ろを振り返る。
私に背を向けた少女――ライムがいた。ただし、斬りつけた場所から少しずつ体がずれていって――!
びしゃああああっ!
「なぁっ!?」
私は咄嗟に飛び退いた。彼女の切断面から、大量の液体が吹き出したのだ!こんな芸当が出来るのは――スライム?だが、ライムは人間だと聞いた。どういう事だ――?
「『ファイア・エレメント』!」
発動時間の切れた魔法をかけ直し、私は相手の出方を窺った。彼女が吹き出した液体は、今や床の大半を覆っている。多分、下手には近付けまい。………なら!
「『ボルカニール』!」
愛剣に炎の魔力を詰め込み、私は地に降り下ろした!剣先より迸った炎は、彼女を取り囲む液体を焼き付くし、彼女へと続く道を作り出す!
「たぁぁぁぁぁっ!」
そのまま彼女に近づいて――!
「『プロード』!」
ドゴァァァァァッ!
――降り下ろした剣に込めた魔力を、思いきり発散させた。対象を中心に、発動者には効かない爆発を起こす魔法だ。魔力を桁外れに使うけど、これで、相手を倒せた筈――
「中々やるわね。それとも、『この程度?』と言った方が良かったかしら?」
「――!?」
嘘だ!あの魔法を食らって、まだ生きている!?そんな筈は――!
振り返ればライムがいた。
あの笑みを浮かべて。
――傷一つ無くて。
「ほらほら、どうしたのぉ?あたしを倒すんじゃないのぉ?」
「い……」
私の心は、今にも悲鳴を挙げそうだった。
信じられなかった。あれだけの魔法を、障壁無しに受けて無傷!?常識的に考えて、例え相手が超回復能力を持っていたとしても、元の肉体が失われたらそれすら叶わない筈――!
「………!」
何とか叫びは飲み込んだけど、私の心はすでに混乱の頂点に達していた。その一方で、彼女を倒せ!と理性が、本能が叫んでいた。
「――ぁぁぁぁぁぁああああああああああアアアアアアアアッ!」
――理性と本能が、思考を追いやった。
『ファイア・エレメント』を維持したまま、私は剣を闇雲に振り回していた。少しでもライムの姿が見えたら斬り付け破壊して、破壊しては斬り付け――もぐら叩きのようだった。倒しても倒してもキリがなかった。どれだけ完膚無きまでに焼き付くしても、次の瞬間には彼女は私の後ろで笑って、わらって、ワラッテ………。
「……っぁっ……ぁっ……ぁっ……」
次第に私の体力も魔力も、底を尽き始めていた。細かく倒す余裕は、もう無いだろう――!
「………たぁぁぁっ!」
私は大きくジャンプし、剣に私の今ある全ての魔力を込め、大上段に振り上げた!そしてそのまま――!
「『メギディア』!」
地に向けて、大きく降り下ろした。
剣より放出された魔力の塊は、地に着いたその瞬間に全てを焼き付くす炎へと変化、強烈な爆風を伴ってこの空間全部を吹き飛ば――!?
「『ドレイン』」
「!!!!????」
彼女は――私が放出した魔力が巻き起こした炎を、再度魔力に変化して、そのまま自分のものとして吸収してしまった。
「あ、ああ………」
脈動が、聞こえる。
魔力が、ライムの中へ流れ込む音が、この広間に、響き渡っている………。
「……ふふふ、中々心地いい魔力だったわ。じゃあ、次はあたしの番ね」
魔力が切れて、体力すら殆ど残っておらず、腰が抜けたように仰向けに地面にへたり込む私に対して、ライムは無邪気な少女の表情で告げた。
「………ぁっ………」
早く逃げなければならない。出来る限り、ライムから遠くへ。けれど魔力も体力も失った私の四肢は、多少持ち上がるだけで体を動かすほどの力を持たなかった。
このままでは、この少女の皮を被った悪魔に辱しめを受けてしまう――身も心も犯し尽くされて、家畜同然の扱いを受けてしまうかもしれない!
「逃げられないわよ。出口はあたしが塞いでるし、あなたにはもう、動く力もない筈よ?あれだけ動き回っていたら……」
何の気も無しに、私の現在の状況を言い当ててくるライム。その言葉一つ一つが、私に絶望感を植え付けていく……。
――だけど。
「――でも、嬉しかったよ」
「………ぇ………?」
とびっきりの笑顔と一緒に、私に告げた言葉は、絶対に状況とそぐわないものだった。
剣で斬られて、炎で焼かれて、それで私に対して「嬉しかった」と言う。不思議以前に、相手の正気を疑うだろう。だけど――彼女のその言葉は、文字通りの意味だったんだ。
この言葉の続きは――。
「あたしのためにいっぱい動いて、カラカラになるまで魔力使ってくれて」
トクン……
「ぇ………?」
幽かに、体の奥底に灯が点った気がした。それと同時に、体のそこかしこが幽かにむずむずしてきて……!
「お陰でね……」
トクンッ!
「あはぁ……!」
お、お腹の辺りから何かが私の体に広がって……まるで葡萄酒を飲んだ時のように、灯った熱が染み渡っていくような――!
この時、私の脳裏に浮かんだものは、戦う前にライムにされた、舌を入れられたキス、そして、なにかを流し込まれ――!
どくんっ!
「あぁあんっ!」
何をされたわけでもないのに、私の体が跳ね上がった!いや、私の体が、内側から突き上げられた!突然の衝撃に、私の意識感覚が全部覚醒したところに、今まで一度たりとも感じた事がないような、痺れるような感覚が駆け巡る!
「あなたの事を、あたしで満たしてあげられる事が出来るんだ」
ライムの声が、途切れ途切れながら私に聞こえた。あなた、あたし、満たす……。
「……ぁっ……わ……私に……何……し…」
全身を駆け巡った不思議な感覚の性で、息も絶え絶えにライムに尋ねる私に、ライムはこの世の喜びを全て詰め込んだような声で答えた。
「あなたに、あたしの一部をあげたのよ……ほら?」
私の目の前で、彼女は再び指をヴァギナに入れ始めた――指だけじゃない!
ずぼぉぉっ!
「!!!!!!」
彼女は自身の腕を、その小さな膣に一気に突っ込んだのだ!ぐにん、ぐにんと、皮膚の下でエイリアンの如く蠢く彼女の腕。一回毎に彼女の腹は、食い破られるんじゃないかと思うほどにぼこん、ぼこんと盛り上がる!
しかし彼女は、
「んんっ……はぁっ……んふっ……」
馴れているのか、さして大きな声も挙げずに、一心不乱で一人フィストファックをしている。
――異様な光景だった。
明らかに異様な光景だった。
外見年齢10歳にも満たないような少女が、自分の体を抉るように腕を秘部へと出し入れしている。気が狂いそうな光景――!
ドクンッ!
「あぁ……ぃぁぁ………」
何!?何なの!?この感覚……どこかもどかしい……鎧が……服が……身に付けているもの何もかもがもどかしい……脱ぎ捨ててしまいたい……はっ!
(な、何考えているのよ私!)
こんな……ピンチの状況で、唯一身を守れるものじゃない!
ドクンッ!
「ぃぁぁ……ぁっ……」
でも……体が……叫んでる……窮屈だって……解き放って、って……あぁんっ!
(駄目っ!何考えてるのよ!)
今ここで脱いだら、どうなるか解りきっているじゃない!
――私の脳内で、私の命がかかった葛藤が行われている。何とか耐えなければいけない。でも、私の心は理性を溶き崩そうと、必死で食いついてくる――!
……でも、まだ大丈夫に思えた。どうにか耐えられると思っていた。
甘かった。
「あらら……うんっ!……あなたも受け入れて……あんっ!……くれたんだね?」
「へ……!?なぁぁぁっ!」
な、何で!?私の指は鎧を脱ごうとしているの!?私の足はどうして下着を器用にずり下ろしているの!?
「不思議そうだね……どうして体が言うことを聞かないか、って思っているでしょ?」
いつの間にか腕のピストン運動を止めたライムが、私の目線に合わせながらその腕を――ずるりと膣から、何かを引きずるように引き抜いた。
愛蜜にまみれた彼女の腕に、握られていたものは――!
「――ひぃっ!」
それは確かにスライムだった。だが、従来のそれよりも大きさは小さく、色も黄金色をしていた。だが、そんな事よりも問題がある。そのスライムが、丸々彼女の体内に入っていたこと……確かにそれは問題だが、驚くことじゃない。問題なのは――!?
「ま……まさか……貴女それを――」
私の最悪な予想を、彼女は――。
「そうだよ。この子をあなたの中に入れてあげたの」
あっさりと肯定した。
「い、嫌ぁぁぁああはぁんっ!」
思わず吐き出そうとした私を、体の中にいるスライムは電流のような刺激を流すことで押し止めた!既に私は、身に付けていたものを九割方外してしまっていて、残っているのはあとパンティーとブラジャーという、非常にあられもない姿をライムの眼前に晒してしまっていた……。
ガクガクと震える私の目の前で、ライムは手に持つスライムを愛しげに頬擦りすると、息子自慢をする母親のような口調で、うっとりと語り始めた。
「この子は他の子とは違ってね、普通は人間を取り込むところを、逆に人間に自分を取り込ませてね、その人間と同化しちゃうのよ――体をまず乗っ取ってね」
「――!!」
「でも乗っとるには条件が必要でね。魔力と体力、そのどちらもが底を着いた状態じゃないと、いくら体に入っていても、同化は始まらない。――だから、嬉しいの」
あぁ………。
「体力と魔力の代わりにこの子があなたに浸透し、あなたが気持ち良くなっていくのが――あたしには嬉しいの」
私は、もう何も言えなかった。つまり、このスライムを流し込まれた時点で、私の敗けは決まっていたと言うこと――!
びくびくびくんっ!
「あぁあぁあんっ!」
同化したスライムが、私の性感帯を一斉に刺激した!細胞に入り込んだスライムが一斉に蠢くという、人間には不可能な攻めに、私の体は大きく弓に反った!
じわり、じわりと、パンティに染みが広がっていく。後ろだけじゃない。前から、寧ろそちらが中心となって、下着に液体の重みを加えていく――。
べとべと……きもちわるい……脱ぎたい……脱ごう……。
(い、嫌だ、だ、駄目、脱がさないで!)
私の思考とは裏腹に、体はあっさり下着に手をかけ、そのままゆっくりと下ろしていく。手をぬるぬるに汚しながら、私は自身の秘部をライムに晒してしまう事になってしまった。
ぴちょり、とパンティが地面に落ちる。体液を相当吸い込んだそれは、落ちると同時に溜め込んだ液体を外へと染み出させ始めていた。
「へぇ……綺麗じゃない、嫉妬しちゃいそうだよ」
「い……いゃぁ……みないで……みないでぇ……」
晒された秘部をまじまじと見つめるライムに、私は目に涙を浮かべて叫んだ。けれど、そんな感情とは裏腹に私の両足は、少しずつ目の前で股を広げていく。
「うふふ……体は正直じゃない。ほんとはあなた、見られたいんじゃないの?」
「な――なっ!」
「私に見せたくて、見られたくてしょうがないから、こんなに溜まってるんじゃないの?」
にやにやしながら、ライムは無造作に、私の秘部に指を突っ込んできた!
「あぁあああぁあんっ!」
きもちいい……きもちいいよぉ……!
私の心が叫ぶのを、私は否定したかった。でも、体を駆け巡るそれは、間違いなく快感だった。
気持ち良かった。
びくびく体を震わせる私を見下ろしながら、ライムは指に付いた私の愛液をぺろりと舐めると、
「ほらぁ。一回入れただけでこんなに濡れちゃってるのよ?それにびくびく震えちゃって……実は淫乱?」
「ぃぁ、ぃぁぅ………」
違う、と否定しようとした私の舌は、ろくに言葉を呟くことすら出来なくなっていた。舌にまでスライムが浸透してきた――と言うよりは、さっき与えられた快感の余波がまだ残っている――そんな感じだった。
とろぉ………
私の股間から、貯蓄の限界量を越えた愛蜜が、私の脚を伝って流れ落ちていく――!
「あら、勿体無いよ」
ぺろん
「ひゃうっ!」
あ、脚が、脚がライムに舐められてる!脚に流れる蜜が、不思議な弾力を持つ舌で舐められていくっ!
ぺろん、ぺろん
「ひぃっ!ぁぁっ!……ひはぁっ!」
しかも、舐められた場所が段々と疼いていく!ぴりぴりと……肌が敏感に、神経過敏になって――!
一舐め毎に体を痙攣させている私を、ライムは悪戯めいた笑みを浮かべながらじろじろと見て、
「ふふふっ………ふー♪」
さわぁ……!
「ひっ………いああああああああああああああっ!」
ぷしゃああぁぁぁぁぁ……
神経が過敏になるあまり、皮膚全体が性感帯になってしまった私は、ライムの一息で限界を越えてしまい――達してしまった。
お尻とおまんこ、そのどちらもから暖かい液体が噴射されているのが分かる……。
とくん、とくん……
……あぁ……きもちい……
(駄目ぇ……流されちゃ駄目ぇ……)
必死の私の思考も、スライムがすっかり浸透した体には届かない。
「……ぅぅっ……ぃぐっ……ぁぁっ……」
いつしか私は、あまりに激しい羞恥心と屈辱感、そして焼き切れそうな快感のあまり、自分の年も忘れて泣き出してしまっていた……。
「あらら……お漏らしして泣いちゃったの?困った赤ちゃんでちゅね〜」
人を小馬鹿にしたようなライムの笑い声に、反撃の一つもくれてやれない自分の体が恨めしかった。悔しかった。全く思うように動く気配のない私の体。それを思うと、涙が次々と溢れ出してくる……。
最悪だ。いっそのところ、殺された方が楽だったかもしれない――そんな考えが頭を過った瞬間、
びくびくびくんっ!
「あぁぁはぁっ――!」
体に同化したスライムが、私の体に快楽信号を送る!先ほど出きっていなかった分の尿と愛液が私の中から、目の前のライムに再び降り注ぐ!
しゅあああああぁぁぁ……。
「……だらしのない赤ちゃんでちゅねぇ……」
尿と愛液にまみれた髪の毛を撹き上げながら、ライムはゆっくりと、私の上に乗り掛かってきた。
ぬちゅ、ぬらぁ……
彼女と私の愛蜜がローションのような役目を果たし、肌が触れ合う度ににちゅにちゅと音を立てながら、私の中に快感を送り込んでくる――。
「ぁは……はぁ……ぁは……」
先ほど放たれた快楽信号のせいで、私の思考力は今――殆ど存在しなかった。あったとして、赤子程度だっただろう。
「ふふふ……」
壊れたような笑顔を浮かべているであろう私に向けて、本当の母親のような、その実どこか悪戯そうな笑顔を向けるライム。
仄かに水色の混じったピンク色の唇が開くと――。
「だらしのない赤ちゃんにはぁ……おしめをしてあげまちゅねぇ〜」
……おしめ?その言葉が理解できなかった。ただ何かをしてくれる、それが私には(嫌な予感がした)嬉しかった。今すぐにでも(止めて)して欲しかった。
「……あは?」
口の端から涎を垂らして、私がライムを見つめた時――!
ぺろんっ
「ひぁ――?」
あ、あれ?何で私、お股を舐められて――口は目の前なのに!?
ぺろん、ぺろんっ
「ひぁっ!あふぅ――!」
一舐めされる毎に、私の心が削り取られていく。プライドが、快感によって上塗りされて……だ、駄目よ負けちゃ……。で、でも……。
れろれん、れろれん
「ふふ……お股、気持ち良い?」
「ひ……気(ひ)持ひ良ふなんふぁ……!?」
ライムの声に、残った気力で何とか答えようとした私は――見てしまった。
「―――!?」
ライムの秘部から、何か緑色の、舌のようなものがぴょこんと顔を出していた!ぬらぬらとした光沢を持ったそれは、私の陰唇を舐め上げていて――!
ず ぼ ぉ っ !
「あああああああああああっ!」
私の目の前で、その物体は私を指し貫いた!そのままぬぷ、ぬぷと奥に体を進ませようとしている!
物体が体を動かす度に、私の視界はちかちかと電光が走り、全身は恐ろしい勢いでがくんがくん揺れて――!
ぶつんっ。
とうとう、私の意識は、限界を迎えてブラックアウトしてしまった……。
「あらら……やりすぎちゃったかな……」
いつの時でも、初めてだったり久しぶりだったりする事って、加減を間違っちゃうのよね〜。
あたしは、体からおしめスライムを押し出すと、次の準備に入ることにした。
………よし。おしめは良い具合に騎士さんの両穴に入ったわね。同化したあの子も精神に少しずつ入ってきてるし……ね。
あたしは腰の辺りに乗ると、改めて彼女に向き直った。目の前にあるやや大きい二山と、それを覆う布、それを目の前にして、やることは一つ。
胸に顔を埋めながら、あたしは彼女のブラジャーを外した。準備完了。
「さ、出ておいで――あぁあぁんっ!」
私が呼ぶと、この子達は膣を擦りながら体を出してくる。それは双子の子でも一緒だ。
あたしの愛液にまみれて出てきたのは、白い双子スライム。まるでお乳のように白いこの子達を、あたしは――。
ふわふわしていた。
頭の中が。
ただそこにあるだけで、何故か気持ちが良かった。
まるでこの世界を知る前、母親のお腹の中で浮いていたような……。
その一方で、体に何かがくっついている感じもして、それすら気持ち良かった。
まるで母親が自らの子供に乳を与えるような、またお腹の中の生命を感じるような――母性。
このままこうしていたくて……でも微睡みの中、何かに呼ばれたような錯覚を覚えて………私は目を開いた――!
「き、キャアアアアアアアアアアっ!」
目を開いたとき、私の肉体はその様相を変えてしまっていた。
まず目に入ったのは、両胸にへばり付いている白いスライム。まるで半球状のプリンにかかる生クリームのようなそれが、ふるふると震えながら、私の胸を覆い隠していく――!
その先、私の股間から腰回りにかけて、緑色のスライムがまるで下着のように張り付いていた!そのスライムも、徐々に体を覆い包んでいく――!
両腕両足にもベットリとスライムが絡み付き、地面に体を縛り付けていた――!
そして、私の腰にとろとろと何かを流し続けているのは――!
「おはよ〜。いい朝でちゅね〜」
『水のライム』その人だった!
「ああ………ぁぁ………」
絶望的だった。
逃げられそうもない。
万事休す。
覆す手段がない。
このまま堕ちた方が楽……?
(駄目っ!)
それでも心の片隅では、必死で逃げ出す方法を考えようとしていた。断崖絶壁に辛うじて指一本だけで引っ掛かっているような、あまりにも頼りない精神だけど、それでも何とか保とうと必死になって――!
ずぼおおおおぉぉっ!
「み………みびゃあああああああああああぁぁんっ!」
ほぼ全身を包むスライムが、同時に活動を始めた!緑色のおしめは、その体を私の子宮と直腸に向けて一気に潜らせ、両腕両足のスライムは腕や足全体をぬるぬると愛撫する!
そして胸のスライムは――!?
「ひぃっ!むりぃっ!そこぉむりぃっ!ひぁ、ああああああぁっ!」
乳首を!乳首を圧し開いて私の乳房へと入ってくるっ!通常は犯されることの無い聖域に、体を震わせて入ってくるぅっ!
「いあっ!あぁあっ!」
あぁ――どんどん入ってくるぅ……スライムがぁ……私の中にぃ……。
「ぁぁ……ぁはぁ………」
お腹の中も、赤ちゃんがいる場所も、胸の中もぉ……。
あ、私の胸が――大きくなっていく……。今までよりも、ずっと大きく……。
いつの間にか、私の胸の上に白いスライムの姿は無くなっていた。代わりに……たぷん、たぷんと音が中で響いてそうな巨大な乳が、私の目の前でゆらゆらと揺れている。
仄かにその胸から、じんとした暖かさが広がっていくような、そんな感じがした。どうしてだろう………すごく、幸せな感覚、優しい空気が流れてる――。
「おいしそうなお乳……飲ませてもらうね、ママ?」
ぼんやりとしていた私は、いつの間にか近付いていたライムの姿に気付かなかった。いや、気付いたとしても――多分きっと、何もしなかっただろう。
(――!―――!)
私の心のどこかで、何かが叫んでいる。でも、何を叫んでいるのか、今の私には全く分からなかった。
「………あ………」
私の乳首が、ライムにくわえられて――!?
ぢゅうううううううう〜っ!
「あはあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」
そのまま一気に吸い上げられた!
「んむ……ちゅぶ………ほむん……」
ライムは唇と両手で巨大な乳房を揉みながら、歯の先で乳首を弄る!ふにふにとした鈍い感触と、こりこりとした鋭い感触が、私の脳を一気に襲う――!
ぼこぼこぼこぉっ!?
「ひぁっ!?」
わ、私の胸の中から何かが溢れて……あぁあっ!胸が、胸が破裂し、そ――!
びゅるるるるるぅ〜っ!
「ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
でるっ!でちゃうっ!母乳がっ!母乳がいっぱいでちゃうぅぅっ!
乳首が裂けてしまいそうな勢いで、私の胸から有り得ない量の母乳が一気に発射された!
「んく、んく、んく………」
それを、ライムはすべて飲み干していく……そしてそのまま、膣からスライムをうにうにと産み出していく――。
ぶしゅうっ!
「ああぃぁあああっ!」
乳がぁっ!母乳が止まらないよぉっ!揉まれていないもう片方の胸も、中でたぷたぷと液体がうごいてぇっ――あ、あぁ、ぁああぁっ!
ぷしゃあああああああああああっ!
「あああはあああああぁああああああああんっ!」
――その瞬間、視界は白く染まった。
両胸が勢い良く母乳を発射する事で生じた快感が、同化したスライムによって増幅されて全身に伝わり、結果――。
どばるびっしゃあああぁぁぁぁぁ……
しゃぁぁぁぁぁ………
びゅううう…………ぴゅ
――私は……完全に果てた。
(―――)
その時、私の中で、何かが大声を上げて――消えた。
うにょろん
徐々に、私の体がスライムに覆われていく………。ライムの中から次々に湧き出していくスライム。とく、とく、と音を立てて、スライムの脈動が私を包み込んでいく――。
「ああぁぁぁぁ………」
いつしか私の体は、巨大なスライムの中に捕われてしまっていた。呼吸は出来たので、窒息で死ぬことはないだろうけど、もう動くことは出来ない。
「あはぁ………」
でも、私は今、幸せを感じていた。私の全身を、スライムにもみくちゃにされる感覚。私の体と同化したスライムから届けられる、あの甘い刺激。白いスライムがくれた、乳の出る巨大な胸――。
「――?」
あれ?いつの間にか私の臍に、何かが繋がれている……。
『へその緒、よ』
この声は――ライムさん?
『あなたはもう一度、私の娘として産まれるの。もっと気持ち良く、もっと幸せになれるのよ』
気持ち良く――しあわせに――ライムさんのむすめ………。
とくん……
あ……おなかのなかに、なにかがながれて……。
とくん……
あ……わたしから、なにかがでていって……。
とくん……
わたし……わたしって……あれ?
とくん……
……あ……。
ここは、おかあさんのおなかのなか。
わたしは、おかあさんのむすめ。
おかあさん……ママ………。
………しあわせ………。
「………ふふっ、いい子」
あたしは、スライムと自分の体を切り離した。あの騎士さんは、今は幸せな夢を見ながら、あたしのスライム揺り籠の中で眠っている。
そろそろ……体が透け始める頃。
果たして彼女の体は、周りと同化するかのように、指の先から徐々に透明になっていった。これが髪の毛一本一本にまで浸透した瞬間、それが――彼女があたしの『娘』になる瞬間。
とくん……とくん……とくん……
心臓の鼓動をB.G.M.にしながら、あたしはこの洞窟を出る準備をした。もうすぐ娘になる彼女との約束だからだ。
「ん………と」
薄明かりの中で地図を広げながら、スライムにとって過ごしやすい、水と魔力に満ちた場所を探す。
「………ここかな」
ある程度検討をつけたあたしは、地図と残りのスライムを回収して、母胎スライムにもたれ掛かった。そのまま――。
「ふふふ………」
スライムと融合して、あたしの臍に彼女の臍の緒を繋いだ。
人型スライムとして産まれてくる頃には、あたしの事を「ママ」と慕うようになっているでしょう。
そんな近い未来を心に描いて、あたしは瞳を閉じた………。
fin.