俺が各世界に送った分身はその世界の「英雄」によって倒された。 この事象が俺にもたらした感情は憎悪ではなく、「英雄」たちへの興味だった。 俺は彼らに会わねばならない。彼らに伝えねばならないことがある。 だから俺は「英雄」たちをこの世界へ呼ぶことにした。分身は消されたとはいえ、石像 の力を使えば呼び出すことはできるだろう。だがしかし、この世界は彼らを歓迎するに は少々寂しすぎた。人間はもちろんだがモンスターすらいない。このままではなんの障 害もなくここまで辿りつけてしまうだろう。それではあまりに興醒めだ…。しかしどう すればいいのだろうか? 「お困りですか?」突然の女の声だった。 「誰だ!?」反射的に身構える。 「ふふふ、魔王ともあろうお方が、この程度でうろたえてはなりませんわ」 声は近くから、いや、まるで俺の隣りにいるかのよう…しかし姿は見えない。俺はひと 呼吸おき、冷静に回りを見回した。やはりいない。気配もない。 「…どこだ」 「ふふ、こちらですわ。」 その言葉と共に、もぞりと、俺の下半身でなにか小さなものが蠢いた。 「……ッ!」突然の予想だにしない感覚に思わず反応する。 「ふふ、驚かせて申し訳ありません」 言葉とはうらはらに楽しそうに「それ」は俺のものを二周、三周と舐めまわす。舌のよ うに自在に、しかし舌以上にやわらかくとろけるような、まるで液体そのものが舐めて いるような感覚。まったく異質な、しかしどこかで…。俺は耐えきれず、服を脱ぎ確認 する。「それ」はまさに青い液体だった。俺のなかでなにかが繋がった。 「フェミノフォビアか…」 俺がつぶやいた刹那、青い液体はつーっと粘りながら垂れ落ち、地面に付いたところで ごぼりと音をたて、一気に増えた。青い水たまりからさらに液体が重力に逆らって伸び てゆき、それは青い液体をまとった、裸の女となった。 「ふふ、ばれてしまいましたか」 フェミノフォビアはすこし残念そうにこう口を開いた。 「誰でもわかる。あの姿と、そしてあの快楽を味わったものなら…」 「確かに、それはそのとおりですわね」 むこうは俺に危害を加えるつもりはないようだ。いや、確か前のときはいちおう服を着 ていたはずだが、まるで俺を誘っているかのように、いや、それ以前に。 「何故ここにいる。俺はおまえを倒したはずだ。そしておまえの主も。」 「私はあの程度では死にません。そして私の主はいま目の前に。」 「どういうことだ。」 「あんな小物に私は作れませんわ。私は代々の魔王となるかたにお仕えしてきたのです。 ですから次の主はあなた。そして私のちからは…」 フェミノフォビアは自らの下腹部に右手をのばす。そして、既に青い液体にまみれた右 手で腹をなでながら続ける。 「おなたには先ほど戦ったときにたっぷりと私のなかに注ぎ込んでいただきましたわ。 半分は私のちからとして使いましたが、もう半分は……ふふ、ちゃんと見ていてくだ さいね」 彼女の右手がさらにその下、女性の象徴へとのびる。そして青い液体を塗りつけ、まさ ぐるように動きはじめる。 「……んっ……ふふっ………あっ…さあ……出て……でてきてっ……」 彼女の秘裂から液体が垂れ落ちてくる。それは愛液でもなく、青い液体でもなく、すき とおった黄色の、しかし粘る液体だった。 「……ふふふっ…もっと……もっとっ……」 ひとすじ、ふたすじ、液体の勢いは増す。まるで蜂蜜を入れた瓶をひっくりかえしたか のようにどろどろと流れおちる。彼女の指のうごきはさらに激しく、掻き出すようにさ らに奥へとはいってゆく。 「……あはっ………あと……少し………ふっ……ああっ!!」 彼女は軽く身体をふるわせた。蜜は止まり、彼女の足元には大きな黄色い水溜りができ ていた。 フェミノフォビアは自らが産みだした水溜りの横に立ち、語りかけた。 「さ、お父様にご挨拶なさい」 黄色の液体はごぼりと音を立てたかと思うと噴水のように湧き出し、フェミノフォビア とそっくりな、しかし黄色の液体をまとった女の型をとり、こう口を開いた。 「ポワッシーといいます。お父様。」 「あ、ああ」 とまどう俺にフェミノフォビアが言う。 「こうやって私はあなたの望むものを産みだすことができます。あなたが私のなかに注 いでくだされば、ね。あなたの望むまま、あなたの望むものを。ふふふ、まだ産めそ うですわ……あっ。」 フェミノフォビアの陰部から今度は灰色と赤の液体が溢れだす。 「お母さま、私も手伝います。」 ポワッシーはそう言うとフェミノフォビアの背後につき、その黄色い液体でまみれた手 を、自分がさっき出てきたところへと指をさしこむ。 下を娘にまかせ両手が空いてしまったフェミノフォビアだったが、一部始終を見てしっ かり臨戦体制の俺の下半身を見て、くすりと笑い、こう言った。 「ああ、私だけが楽しんでしまいました。この空いた両手、あなたの為に使いましょう。 さあ、おいでになって。」 俺の理性が妙に冷静に、ああ、甘いささやきだ、と分析していた。 「えー私はー?」とフェミノフォビアの後ろで鼻を鳴らすポワッシー。 「まざりたいから早くおわらせちゃお」と指のペースをあげる。 「ふあっ……だめっ……全部でちゃう………んっ!!」 フェミノフォビアはまた軽く身体をふるわせた。それと共に液体は止まった。 「ふぅ……。さ、お父様に挨拶を。」 フェミノフォビアは呼吸を整えつつ言った。俺は、どうやらおあずけになってしまった らしい。 液体はヘビの下半身にコウモリのような翼をもった女に変化した。 「……リンバースキュラです、お父様。」 軽く一礼をしつつ、彼女は挨拶した。 「ああ、よろしく」こう答えるのが精一杯だった。 「どうやら、私のなかもようやくからっぽになったようです。」 会話が途切れた空間に、フェミノフォビアはこう切りだした。 「ふふ、凄いパワー。あんな小物とは大違いの。あなたならこんなモンスターなど産み だす必要もなさそうなのに、どうして。」 「俺の趣味だ。簡単に潰しては面白くない……」 その続きの言葉を、俺は噛み殺した。そしてひと呼吸おいたあとこう続けた。 「それに快楽の追求も悪くないな。さあ、お前にはもっと産んでもらわなければならん。」 俺はフェミノフォビアを抱きよせ、キスをした。そこにふたつの声がかかる。 「ねー今度は私もまざっていいよね?」ポワッシーと 「……あの、私も……」リンバースキュラだ。 「問題ない」俺は答えた。 *****************************