あちこち体を動かしながら、妙にぎこちなさそうにしているジャーマネンにカラベラスは声を掛けた。
「どうしたの? ジャーマネン」
「カラベラス様…申し訳ありません。どうやら風邪を引いたようでして…」
「風邪?」
「はい。どうも身体が硬いのです…」
ジャーマネンが肩を動かすたび、こきん、こきんと、関節が鳴るような音が響く。なるほど確かに固くはなっているようだが。
「それ、本当に風邪なの?」
カラベラスの問いに、ジャーマネンは頷く。
「寒けも少しあるのです。風邪とはそういったものだと聞きましたが…」
カラベラスはそれを聞き、くすりと笑う。
「馬鹿ね、もう冬なんだから寒いのはあたり前じゃないの…」
「冬、ですか?」
「…ああ、そうだったわね。貴女は『冬』を知らないのね。ネメシスにも未来にも、四季はなかったから」
今はもう遠くへ行った記憶を辿るカラベラス。
「『秋』は、木々がみんな私のような色になって、とても美しかったです…」
「そうね。これから雪が降って、みんな真っ白になるの。それもとっても綺麗なの。」
「…『雪』とは、もしかして今、外に降っているものでしょうか?」
カラベラスが外を見ると、灰色の空に白い粒がひらひらと舞っている。
「あら、寒い寒いと思ったら…」
「綺麗、ですね…」
寄り沿うように外を見ながら、ジャーマネンが呟く。
「ええ、本当に綺麗」
ジャーマネンとカラベラスは無言で窓の外を見つめる。
「でも困ったわね」
ふいにカラベラスが口を開く。
「なんでしょうか?」
「固いって、貴女、凍ってきてるのよ。なんとか考えないと…」
冬は、これからが本番だった。
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書いた日: 2007/09/07 18:57 カテゴリ:妄想