カテゴリ:妄想

読むと死にます。

2010/09/14

たるんでいるぞ、俺!!

というわけで、今日からジェラさん週間とか。毎日更新(したい)

俺の名前とか、そんなものはどうでもいい。それより、この監視モニタを見るのが先だ。俺が作った自慢の怪人たちが、素手のメイドに次々と嬲り殺しにされているのだ。

今、前に出たのがミノタウロス男。牛の力をかけあわせ、その突進は厚さ10mの鉄板をぶち破るパワフルな怪人だ。……が、そんな解説をしている間に、突進へあっさりカウンターパンチ、拳は腹を付きやぶり、青い血が吹き出て一発アウト。
次に出てきたのがカマキリ男。ダイヤモンドの原石を豆腐のようにカッティングする、両腕の鎌が持ち味だ……が、そんな解説をしている間に、腕の関節へカウンターの手刀。腕はぽっきりと折れ、あとはサンドバッグ。
そこを背後から襲ったのはトカゲ男。ぬめぬめした鱗はいかなる攻撃も滑らせ、通用しない……が、力任せに殴りにいったところに足払い。床には立てられていたカマキリ男の鎌めがけて自由落下だ。
顔を上げたメイドに向かい、ホウセンカ男が散弾のように種を飛ばす。メイドは避けようともせず、全段命中。大量の種が彼女を貫通していった。が、それを意に介することなく、メイドはまっすぐとホウセンカ男に歩いてゆき、拳を一発、彼の胸へと叩きこんだ。

メイドはまっすぐに、地下ウン百メートルにある俺の部屋……改造室へと歩いてきていた。
警報が鳴ったのは丁度、新たな改造に取りかかろうとしたところだった。素材とするはずだった女が、そこの手術台で眠っている。
緊急退路であったはずの背後のシャッターは、何故かぴくりとも動かなかった。
ゆえに、今俺に出来ること、怪人の指揮を全力で行なっていた。
というより、既に全兵力をその防衛に裂いている。
だが道を阻んだ怪人は、あっさりとヤブ蚊を振り払うように殺されていくのだ。防衛戦が新聞紙のように簡単に破れてゆくのだ。
ふと、モニタの向こうのメイドと、俺の視線が交錯する。呑みこまれそうな緑の瞳に、ぞくりと冷たいものが走る。
向こうからこちらは見えていないはず。だが、メイドは見透したかのように口元を歪めると、画面は砂嵐に変わった。

そして今、稲妻のような轟音を立て、核の炸裂にも耐えるはずの扉が吹き飛ばされた。
砂煙の向こうに、人影が見える。
いや、人ではない。
バケモノ。
それ以外に、なんと形容すればよいのだろう。
砂埃が治まってゆく。
メイドのふりをしたそれは、笑顔を作り、そこに立っていた。
彼女はその両の拳だけで、俺の前に立っていた。

かつん。
一歩、バケモノはこちらに歩みを進める。

「正直、こんな派手にやらずに、潜入してしまえば簡単だったのです」
ーーーー 笑顔が、俺に近づいてくる。俺の足が、自然と後退してゆく。
「実際、まず裏口を閉めてます。それから表口から入ってきたんです」
ーーーー さらに一歩下がると、がしゃんと音がした。
「主人の命とはいえ、正直、面倒でしたね」
ーーーー そこは脱出シャッターだった。そして今気がついた。赤い粘液が接着剤のように地面とシャッターを固定していたことに。
「でもまあ、たまの運動、楽しませてもらいました。少々、歯応えに欠けましたが」
ーーーー 「だ、誰の差金だ」背中をシャッターに押しつけつつ、やっとのことで声を出す。
「言っても、知らないと思いますよ? あなたの組織や、目的や、そんなことにはまったく興味はないですし」
ーーーー 「な、なにが目的だ」枯れた喉が痛い。
「ただ、あなたには興味があるのです。その、人を改造する知識、能力、経験。それを是非、私のものにしたい」
ーーーー 「ス、スカウトか? ならば……」
「いいえ。その知識の一雫まで、私が食べて差し上げます」
ーーーー 「た、食べ……?」喉が、痛い。
「文字通りですよ。本当に楽しみなんです。貴方の知識が私のものになるのが。私の中の他の知識を合わせれば、もっと有効に使えるはずですし。なにより、美味しそうですもの」
ーーーー 赤い舌が唇から覗く。バケモノは、心底楽しそうに、舌なめずりをした。

「ではまず、下味でもつけましょうか」
その瞬間、俺の両手になにかが巻きついてきた。
ぬるりとした粘液を分泌し、やわらかいゴム管のような弾力があるそれに、俺は手術でよく触れる小腸を思い出す。
が、実際に巻きついたのはそんなものではなく、バケモノの、赤い三つ編みであった。
それが蛞蝓のように粘液を塗りつけ、蛇のように滑らかに、つるのように螺旋を巻き、俺の腕を伸びてきているのだ。
その髪の毛とはあまりに遠い触感と、触手のように蠢く様に、俺は直感する。
これは三つ編みのフリをした、別の「なにか」なのだ、と。

「さあ、丁寧に"調味料"を擦りこんで差しあげます」
螺旋状に巻きついた三つ編みは、自在に長さを伸ばし、そのまま胴へも巻きつきはじめる。
ただ伸び元はあくまでメイド側の根本であるらしい。常に"三つ編み"が粘液を潤滑油に腕を滑っているのだ。
それはあたかも、胴が恐しく長い蛞蝓が這い回っているかのようだった。
じゅる、じゅるる、と音を響かせながら、腕を、胸を、腹を、"三つ編み"で撫で回される。
服が粘液を吸い、重くなっていく。
もしそれが本当に蛞蝓によるものであったなら、俺は嫌悪感をもってそれを拒否しただろう。
が、俺の目の前には、メイドの顔をしたバケモノが、ぼんやりとした目で陶酔し、口元を歪ませていた。
……少なからず、俺はそれに、感じてしまったのだ。性的興奮を。
それは、目の前のバケモノも同じらしい。
俺に粘液を塗りつけるたび、メイドの呼吸は早く、熱っぽくなっていた。

「そうそう、服を脱がせませんと……」
と、粘液で重くなった俺の服に、メイドが手をかける。
そしてボタンを外そうとするが、遅い。手が震え、思いどおりにいかないらしい。
「ふ……ふふ……私としたことが……」
そう小さく呟いたかと思うと、唐突に宣言した。
「ええ、もう服なんていりませんよね?」
そして、袖口へと手を入れると、力任せに二つに引き裂いてしまったのだ。

「ふ、くふっ……くすくす……」
現わになる上半身。既にどこもかしこも粘りと艶のある唾液のような粘液で濡れ、腕からはどろりと雫が垂れ落ちるほどあった。
そしてメイドの赤い三つ編みが、それこそ大木に絡まる蔦のように巻きつき、じゅるじゅると音を立てながら蠢いていた。
「ふふっ……では少し味見をしてみましょうか……あはっ」
と、メイドは俺の少したるんだ腹に顔を近づけ……

ぺろり。

……!!!!! が、がぁぁぁっぁあ!!
ただひと舐めで、俺の全身に走る電撃! 足ががくりと崩れ、息が早くなり、目の前が霞む……
「くす……良い塩梅に染みこんで……くすくす……」
メイドの声が遠くに聞こえる。
だが、ぼんやりとした視界の隅に、俺の腹が写ったその瞬間、意識は急速に覚醒した。
「な、なんだこれは!」
俺の腹が、まるでプリンかゼリーのように、削ぎ落とされていたのだ。
メイドの舌が通ったサイズに合わせ、小さく欠けてしまっていたのだ。
さらに恐しいことは、そこが欠けている痛みなどまるで感じないことだ。
最早俺の体なのに俺の体ではなくなっている気がして、震えが止まらないのだ。

その恐怖が、俺の心から「逃げる」という選択肢を思い出させた。
圧倒的力差や、異質さを放り投げ、ようやく「逃げる」ことが出来るのを思い出したのだ。
「う、ぐ、ぐががががっ!」
未だ痺れが抜け切れない両の足に喝を入れ、動けという信号を神経へ流しこむ。
震えながらも足は動き、足の裏を床につける。
背をシャッターに押しつけながら、食いしばって膝を伸ばす。
ぎり、ぎりりと歯を軋ませながら、ようやく半腰の体制まで持ってくる。

そんな俺を、メイドはにんまりと見つめながら声を上げる。
「まあ、まだそんな元気があったのですね!」と。
それに言い返す気力もない。少しでも気を抜けばまた膝から崩れおちてしまうからだ。
「ああ、こんな生きの良いものを食べるのは久しぶりです。じっくり、肉の一欠片まで、骨の一片も、汗の一雫も残さず、綺麗に食べないと!」
メイドの言葉は心底嬉しそうだった。

「さあ、そうと決まればまずはいろいろな液体を吹き出してしまう、あそこを塞いでしまわないと!」
メイドは鼻歌を口遊みながら屈みこみ、やっとのことで立ちあがった俺のズボンへと手を伸ばす。
「さあさあ、お疲れのあなたに変わって、ズボンを脱がして差し上げますからね〜♪」
今度は正確な手付きで、ベルトが手早く外さると、すぐさまズボンとパンツが一気に下まで降ろされた!
「ふふふ、なかなか立派なものじゃないですか〜♪」
とろりとした眼差しで俺のモノを見つめながらそう呟くメイド。
と同時に、これまでとはうって変わって一瞬で、俺の足首まで三つ編みがじゅるると巻き付いた。
「さあ、足にも味付けをしながら……ふふふっ、これを見てください……」
メイドの手へと三つ編みの一本がじゅるりと巻きつくと、俺の目前に先端を見せつける。
と、先端にいくつかの筋が通ると、どろりと大量の蜜を掃き出しながら、朝顔の開花のように螺旋を描きつつ先端が開いてゆく。
「ほら、中をちゃぁんと見てくださいね……」
目の前にあるのだから、中は否応なく視界に入る。
そしてそこは、赤く襞のある肉壁がぐねぐねと蠕動する、しいて、強いて言うのなら、小腸の内部に近かった。
だが普通の小腸とは違い、びっしりと肉の髭が伸び、涎のように粘液が垂れ落ちるていた。
「おちんちんを吸うための小腸ですから、こんな感じになりました♪」
と言いながら、その三つ編みはゆっくりと俺の股間へと伸びていった。
「さあ、想像してみてください。あなたのおちんちんが、あの中に入る様を。襞で撫でられ、蠕動しながら奥へと導かれる様を。奥まで呑みこんだら、当然その二つの袋も一緒に呑みこんで差し上げます。そして蜜がたっぷり絡んだ繊毛でカリを撫でて、全体をやわらかく、なおかつ押し出すようにマッサージします。キュっと引き締めて、お口には心地良い吸引力を与えますよ。ふふ、どうです? もうすぐ貴方のちんちんは、私の小腸に呑まれちゃうんですよ?」

不覚にも、本当に不覚であったが、俺はその言葉に想像してしまった。
あの中に、自分のものが呑まれる様を。
蜜が流れ、吸い出すように蠢く、いやらしい器官に入れられる様を。
「ふふ、元気になってきたではないですか、あなたのそこが」
メイドは目を細めながらそう言った。
そして、あの三つ編みは、最早俺のものの寸前に伸びていた。
「さあ、期待どおり、食べて差し上げますね。」
その宣告とともに、俺のものは涎を垂らす三つ編みの中に呑みこまれた。

それは、想像を遥かに越えた、心地良い体験だった。
それぞれの行為をひとつひとつ思い描くことは出来る。が、実際には全て同時にその刺激が与えられるのだ。
なおかつそれぞれの行為は、無理矢理搾ろうとせず、かといって弱すぎもしない、適切な強度で与えられた。
例えるなら肌を焼く熱さでもなく、風邪を引くぬるさでもない、適温の風呂。
または痛みを感じる強さでもなく、まったくほぐれない弱さでもない、心地良いマッサージ。
どちらも身を任せるような脱力と、やられている間はいつまでも心地良い持続性と、終わって欲しくない依存性がある。
この三つ編みの中も同じだった。強くもなく弱くもない快感は、ぴくんぴくんと適切な早さで震わせ、ゆっくりと精子が垂れ流されることになった。
あまりの心地良さに足は崩れ、座りこんだあともびくびくと震えていた。
「ふふふ、だらしなく口を開けて、涎、垂れてますよ?」
その声すらも遠くのほうに聞こえていた。目にはなにかが写っていたかもしれないが、脳はそれを認識できなかった。
白く、霧がかかったような視界の中で、僕はその快楽に身を任せることしか出来なかった。

そう、快楽で、全てが霞んでいった。
自身の体に起きていることですら、夢想の向こうにおいやられた。
粘液が濡りつけられている感覚も、耳に届くぐじゅぐじゅとした音も、遠い向こうの出来事のような気がした。
重力すらも感じとれず、ふらふらと自身の魂だけが上空で浮んでいる。
自分の体から手を離したような、そんな心地だった。
意識から手を離しているわけではない。ただ、身を任せていた。

そこへ、快楽という強力なノイズにも負けない明確な信号を送ってきたのは、意外にも味覚だった。
指のようななにかが、俺の舌になにかを塗りつけたのだ。
「それ」は舌に乗った途端、体温でとけ、味覚に絡みついた。
初めに感じるのは少し癖のある、弱い塩味のような刺激。
だがその直後、まろやかでやさしく、クリーミーな甘みが舌全体を包みこむ。
もしチーズをとんでもなく上質な素材で作り、選びぬいた菌と環境で作れば、こんな味になるかもしれない。
だがそれは近いというだけで、本質としては今迄味わったことがない、別次元の味であった。
一体何が口に入れられたのか。俺はゆっくりと目を開けた。

目の前には変わらずメイドがいた。
そしてメイドが俺の口に指を差しこんでいた。
最早噛みつくなどありえないと、確信していたのだろう。
無防備に口へとつっこみ、指先で舌を撫でていた。

「どうです、美味しいでしょう?」
メイドはにんまりとしながら俺に尋ねた。
「昔、ある研究所に潜入したことがあるのです」
唐突にそんなことを語りだすメイド。
「そこで行われていた、ある研究結果を私のものにするために潜入したのです」
メイドは俺の目を見つめながら語った。

「そこに残っていたのは、ある菌が培養されていたシャーレと、その菌が生成した物質でした。
まず私はその菌が生成した物質から漂う、癖がありながらも食欲をそそる、チーズのような芳香に惹き寄せられることになります。
そこで行われていた研究にある程度の予備知識もありました。私は躊躇なく、その一欠片を口へと運ぶことにしたのです。
そう、今でも鮮明に思い出せます。それが舌の上に乗ったそのとき……私はあまりの感動に飛びあがってしまったのです。
仕事がら世界中のあらゆる食材を知っています。しかしそれでも、この味は初めての経験でした。
以来、これは私的食料ランキングベスト3から落ちたことはありません」

ここまで熱の籠った口調であったメイド。
しかしここで、長く息を吐くと、この先は静かな口調へと変わっていた。

「ただ、同時に心底悔やみました。
その生成物があるということは、同時にこれほどのものを完成させた研究が失われてしまったことも示していました。
そう、もし研究者が残っていたならば、その菌の生成方法も詳細に知ることが出来たでしょう。
さらに研究者さんには私の体内で素晴しい快楽を味わいながら、もっと研究を進めることも出来たでしょう。
もう少し早く潜入できていれば、間にあったのかもしれません。
しかし今では成果である菌が残るのみ。なんとか私の体内で培養することには成功しましたが、改良までは叶いそうにありません」

最後に目を細め、下を向いてメイドは呟いた。「本当に……残念です」と。

「ねえ、あなたもそう思うでしょう? 今、菌が作り出したものを味わったあなたならわかるでしょう?」
唐突にこちらへ触られ、戸惑う俺。
確かにあの味は素晴しかった。本来であればもっと、もっと食べたくなるものだった。
だが、俺の中にある"なにか"が、素直に肯定することを許さなかった。

構わず、メイドは続ける。
「その菌は、ある生物に対し積極的に働きかけ、細胞を分解、発酵し、チーズのように変えてしまうものでした。
そこまでの改変をするにも関わらず、その生物自身にはなんの痛みも違和感も感じさせません。
まあ激しい動きに弱いので、兵器としては使えません。空気感染もしないですし。
……もうおわかりでしょう? それはヒトをチーズに変えてしまう菌なのです。
そして今あなたに塗りこめて、完成した部分をあなたの口に入れたのですよ」

……よく、意味が呑みこめなかった。
なんだって? 今、あまりの旨さに感動したあれが、俺の体?
メイドの言葉を二度ほど咀嚼し、ふと下へと、俺の体へと目を向けた。

それが、いけなかった。

既に俺の体は、三つ編みによってほとんどが食われていた。
メイドの三つ編みは、まるでリンゴを食う芋虫のように、穴を開け、俺の体へ潜りこみ。
向こう側に出ると、またその近くから俺の体へと潜りこみ。
既にそれは幾度となく繰り返され、メイドの三つ編みは縫い糸のように、しかし赤い刺繍とは呼べない乱雑さで、俺の体を食い散らしていた。

恐らく三つ編みを抜いたならば、俺の体は漫画のチーズのように、大量の穴が開いているだろう。
ただそれよりも恐しかったのは、そんな事態にありながら、俺にはなんの痛みも、違和感すらも感じられないことだった。
最早、「俺の体」は「俺の体ではない」、俺の体として機能することはないことを、否応なく理解できた。

「あらあら、こんなに顔が青くなって、どうされたのですか?」
ーーーー メイドは笑顔のまま言った。
「今回はあなたの知能と経験だけいただきますので、体のほうは壊れても良いのですよ。少しでも美味しいほうが、ね」
ーーーー あくまでメイドは笑顔のままだった。
「ここまで来るのにくだらない戦闘をさせられ、せっかくの服も汚れてしまいましたし……ふふふ。本当に、酷いものでしたね、あれは」
ーーーー 瞳は、冷たく輝いていたが。 「人の意思といいますか魂といいますか、動きに生気が感じられませんでした。あれではせっかく強靭な肉体を持っていたとしても意味がありませんね。劣化としか言いようがないです」
ーーーー その口調は、明らかに怒りを含むものだった。

唇が震えた。冷たかった。
なにもかもが遠くに、しかし近くにあった。
ゆらゆらと動くのは視界と、メイドの三つ編みだった。
メイドの両手が、俺の頬を包んでいた。

「……さあ、もういいでしょう」
そう聞こえた瞬間、ひゅんと、赤い旋風が顎の下を走った。
すぐさま、どさりと大きな砂袋が落ちた音。
見れば……いや、見ようと首を動かすことは、既に出来なかった。
俺の頭と、体は切り離されていた。
痛みはまるでなかった。血すら流れ出なかった。

まるでバレーボールのように、俺の頭が宙に投げられる。
目の前の景色がぐるんぐるんと回転し、一瞬の無重力を感じたあと、地面へと向かって落ちてゆく。
2m, 1m, 50センチ、20センチ、10センチ……!! 迫る地面に思わず目を閉じる。
が、俺に向かってきたのは地球ではなく、メイドの足。ばきりと真上へ蹴とばされ、顔まできたところでがしりと鷲掴みにされる。
「くす、くすくす……どうですか? おもちゃにされる気分」
さきほどまでとは変わった、にんまりとした笑顔がそこにあった。
「ですが、これからもっと酷いことになるんですよ? 今回は脳細胞の構成さえ読み取れればいいですから、皮膚とか頭蓋骨とか、そういうものは全部、強力な酸で跡形もなく溶かしちゃおうと思ってるんです」
メイドの言葉は、心底楽しそうに聞こえた。この、最後の言葉を除いて。
「はっきりいって、貴方の知識以外を私の中に残すなんて、不快ですから」

と、メイド側に向いていた俺の首が半回転する。
「さ、これが貴方の見る最後の光景ですよ」
そう、宣告される。
幾人もの人間を切り刻み、繋ぎ合わせ、混ぜあわせてきた研究所。
しかし今は見るも無惨にボロボロだ。
そして作り出した怪人はこのメイドに潰された。
……果たして、俺がやってきたことはなんだったのか。
手術台には俺が手術するはずだった女が、未だ眠りの中にいた。

また、俺の首が半回転。
にんまりと、最早見飽きたほどの笑顔。
「では、いただきますね」
ひとこと、そう言うと、メイドは大きく口を開けた。
俺の頭がすっぽりとはいるほどに。
そこから赤い舌が蛇のように伸び、俺の顎へくるりと巻きついた。

メイドの手が離される。
首だけの俺は、暴れることすら出来ない。
舌が導くがまま口へと近づいてゆく。
うっすらと見える口内は、ヒトとは別のものだった。
スムーズに呑みこむためなのか、白い歯も、歯茎すらもなかった。
奥まで運びこむためだろうか、舌は口腔底からではなく、喉のはるか奥から伸びてきていた。
口蓋は固く平らではなく、多数のシワが柔らかく蠕動し、どろどろと粘液を垂れ流していた。
これから運ばれてゆくであろう口の奥は、なにもかもを呑みこむ、暗いブラックホールのように見えた。
どれもこれも、俺の頭を呑むために、わざわざそう作られたかのようだった。

そしてついに、俺の顎が口内へと入っていった。
まず感じたのは、暖かいということだった。
そして、やわらかかった。肉が隙間なく俺の顔を包みこんだ。
俺の口がメイドの中に入る。どろどろの粘液で塗れた肉が、俺の唇を舐めてゆく。
メイドの口は輪ゴムのように伸び縮みし、顎の骨は無いとしか思えない動きで、俺の高い鼻もあっさりと飲みこんだ。
鼻からは粘液が流れこむばかりで、匂いなど感じられもしなかった。
そして目までが飲みこまれた。ついに光のない世界へと落とされたのだ。

ぬぐり、ぬぐり、ぬぐり……
肉に包まれながら、ゆっくりと下へ降りていることだけが、なんとなくわかった。
と、唐突に広い空間へと落される。
もにゅりと着地したそこ。相変わらず暗いため広さはわからない。
ただ湿った空気が俺を包んでいた。

と、そのとき、頭のてっぺんに熱く焼ける痛みを感じる。
俺は直感した。酸だ。ここは胃なのだ。
途端、ぼた、ぼたぼたと大量の酸が降り注ぎはじめる。
肌が焼け、毛髪が焦げ落ち、耳が溶け落ちる。
あつい、あつい、あつい、痛い!
思わず唇を開け、叫ぼうとするも、既に喉は無く。
酸はどんどんと流れる速度を増してゆく。
筋肉が焼け爛れ、舌が痺れ、骨から肉が削げ落ちる。
熱い。焼ける。痛い。痛い。イタイ。いたい。イタイ。
耳も、目も、鼻も、舌も、触覚も、消えてゆく。ただ痛い。
骨がぼろりと崩れ、またさらに奥が酸へと浸る。
やめてくれ、もう、熱い、痛いから。
あつい、あつい、痛い……イタイ……いたい……


つづく

エロいかどうかわからないまま、俺編、ここで完結です。07/11から続いてきましたが、うーん、これでよかったのだろーか。

まあ物語はまだ続きます。こんどは、痛くないよ? しかもジェラさんの一人称の予定。というわけで、また明日。


  1. かくに:おお、これは…邪気王との闘いの果てに何かに目覚めてくれたのですか!?しかも成長した方のジェラさんとか。堪りませんよコレは!勝手に期待させて頂きますッ!あと調子に乗って自分も一枚頑張りたいなーとか…
  2. 管理人:や、まあ、書いてないなぁと思いまして。というわけでちょっとステゴロしてみました。さあどう食おうか。
  3. かくに:思い立ったらなんとやら、しかもステゴロまで…素晴らしい。 こんな事を聞くのもなんですが今回肌の露出をどこまで開放するのかが気になりますね。スカート開放なら秘所を見せ付けながらジワジワ喰って欲しいし、上半身オープンなら男の両手を取って優しくおっぱいにズブズブとか…若しくは三つ編みからとか。確か三つ編みはまだやってなかったような気がするですよ。厳しいかなぁ
  4. 管理人:三つ編みからかぁ。食べたものがどこに行くのか考えると難しい。でも惹かれる。その線で考えてみます。
  5. 管理人:今日の管理人はよっぱらいきっているのでおやすみです。明日にごきたいくださ
  6. 管理人:すいません、体調最悪なためおやすみです…
  7. 管理人:更新されたら上に来るように変更。でも更新はしてません……ちょっと悩み中。
  8. ななし:更新楽しみにしています。頑張ってください!
  9. かくに:更新すると上に来るのはとってもありがたい変更ですね。静かに応援してますよ!
  10. 管理人:応援ありがとうございます。実際反応がないと不安になったりしてつらかったとかなんとか。期待に添えるものが完成すればいいなぁとか。
  11. R.K:チェック済みかも知れませんが「催眠性感マッサージ~スライム編~」という同人ソフトが発売されたようです。 参考までに。
  12. 管理人:情報ありがとうございます。実はチェック済み。いつ買おうか悩ましいです。
  13. 管理人:うう、今日はちょっと他のことで時間取られてしまた……。
  14. 管理人:す、すいません……緊急でしょーもないことの対応をしていたのでこちらに割く時間がなくなってしまいました。大変申し訳ないです。明日は必ず。
  15. かくに:少しずつ進んでるんスね。楽しみです。
  16. 管理人:ゆっくりで申し訳ないです。三つ編みがでっかい手みたいになって……という場面もある予定なんですが、そこまで行くのにどれだけかかるんだこれ。
  17. 管理人:残業でくたくたのため一回休み。というかここから残りの部分をどうするか考えてなかった。やばい。
  18. 管理人:今日もどうしても体力が……げそり。
  19. かくに:期待せざるを得ない!
  20. 管理人:期待ありです!! が、しかし今日は別のことやらねばならなくなってしまったのでおやすみです……。明日こそ。
  21. かくに:お疲れ様であります!ああついに熟ジェラさんがこんなえげつない事を…次回は更に期待せざるを得ない!!痛くない方向性が特に。
  22. 管理人:熟ジェラさんもエグいときはエグいです。なんでこんな彼に対して厳しいのかは、まあ次回で。次回は痛くしません。

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書いた日: 2010/09/14 00:58 カテゴリ:妄想


作成:スラマイマラス
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