もぞり

突然、俺を包んでいたゼリーが蠢きはじめる。 ずるずると渦を巻き、それはやがて俺の股間のものを捕らえ、引き摺り出す。 真っ赤なゼリーの真ん中から、粘液でてらりと光った俺のものが顔を出した。

「うふふふ、モノだけは立派じゃない。 さあ、味はどうなのかしら?」

ごぽりと、また俺のものがゼリーで包まれる。 この真紅のゼリーはまるで俺の肉棒の熱で溶けているかのように、 粘液を分泌させ、じゅるじゅるとぬめり、渦を巻いて回転し、 あるときは締まり、あるときは緩まり、あるときは吸いだすように蠕動し、 俺のモノを刺激する。堤の中など比べものにならないその快感に、俺のものは5秒と耐えられなかった。

びくっびくっびくっ…

俺が射精したのがわかったのか、ゼリーは俺の肉棒への動きを止める。 そして少しぴくぴくと動いたかと思うと、こぽっと白い粘液を吐きだした。 女はそれをぺろりと舐めた。

「うーん、まあまあってとこかしら。 せっかくですし、綺麗さっぱり絞りとっておきましょう。」

途端にまたゼリーが俺のモノへの攻撃をはじめる。 さっきより激しく、さっきよりきめ細かに、さっきよりやわらかく、さっきより固く。 段差を丁寧に舐めまわしたかと思うと根本が強烈に締められ、 棒をずにゅずにゅとしごいたかと思うと肛門に刺激が走る。 なすすべもなく、俺の肉棒は白濁液を吐きだし続ける。 そして俺の口からは喘ぎが溢れはじめる。 その様を女はくすくすと笑いながら眺めている。

………

どのぐらい経ったんだろう。長い、とても長く思える。 のどが、渇いてきた。よく見ると、股間のあたりに、白い風船のような液溜りが出きていた。 それでも、まだ、びくりびくりと俺の股間は脈打ち続けていた。 まだ、まだ続くのか…、もう…、ここまで思ったとき、ゼリーの動きが止まった。

「ふふふ、絞りつくしたようね。さあ、ここからが本番。」

すこし離れたところで、ダンボールに座って眺めていた女は、 右手の手袋を取りながら近付いてきた。 ゼリーがまた蠢き、俺の疲れはてた肉棒が導き出された。 女は人差し指を伸ばし、棒の先にちょんと、当てた。

ちゅるり

なにかが、俺の尿道を遡ってくる。 女の指先からなにかが伸び、狭き道を無理矢理かきわけ入ってくる。

「ぎ、ぎゃああぁあぁあああぁあぁぁ!!」

あまりの激痛に、俺は悲鳴を上げる。女はそんな俺を笑いながな見つめつつ、なにかはどんどん侵入してくる。 尿道を通り、精管を遡る。ずるっずるっと、滑りながらなにかは入ってゆく。そしてついに精巣に到達する。 侵攻は限界にて止まり、痛みはやわらいでくる。

「ふふ、見事なほどからっぽ。では、始めましょうか。」

尿道を通っていったなにかは管だったようだ。暖かいものが流れていくのがわかる。 そして、精巣が、その暖かいもので満されてゆく… 管はぬめりながら蠕動して、俺の袋のなかになにかを流してゆく。 中からのやさしい刺激。痛みが、快楽へとかわってゆく。 いつのまにか、俺のモノはまた膨らみ、立ちあがりはじめる。

さらに、管の運ぶなにかで満された袋の中が、溶けていくように感じた。 痛みなどなく、むしろ溶ける快感だけが伝わってくる。 恐怖もなく、溶かされた精巣は、なにか違うものへと再構成されてゆく。 満たされ、溶かされ、さらに流しこまれ、袋は膨張してゆく。 そろそろね、と彼女は言った。

じゅるるるるっ

一気に管が引きぬかれる。その射精にも似た感覚は俺を絶頂へと誘うに十分だった。 しかし、びくりと吐きだされたそれは、いつもの白い粘液ではなく、 黒い、真っ黒な液体だった。女は素早くそれにむしゃぶりつく。 そしてごくりごくりと飲みほしてゆく。

肉棒がおさまり、女が顔をあげる。さきほどより昂揚しているのか、顔が少し赤く、 口元からたらりと黒い液体が一筋流れたその表情は、何故か、とても妖艶に見える。

「……最高よ。ふふ、美味しい、とても、とても美味しい…。 ふふふふふ、もう少し、もう少しだけ、飲んでも大丈夫よね。」

女はぺろりと舌で唇を舐める。覗いた舌は真っ黒になっていた。 そして口元の黒い筋を右手で擦りとる。右手が喜ぶようにぶるりと震えたように見えた。 ここで手袋をしていないことに気がついたのが、左手で握りしめていたそれを着ける。 そして、今度は俺のモノに顔を近付け、一気にむしゃぶりついた。

女の口内は、人間のものではなかった。 幾重にも重なる肉壁がやわらかく俺のものを包みこみ、 そこを自在に蠢く舌が割ってはいり巻きつき、 唾液は大量に分泌され潤滑し、 鋭い歯が段差をカリカリと刺激し、 さらに口内全体が蠕動していた。 そして、強い強い吸引力が俺のモノを引っぱった。 肉棒はまさに心臓のように鼓動し続け、 押し出す液体は、全て女に奧へと吸いこまれていった。

俺にとって長い長い時間だった。俺の全てを吸いだされるかと思った。 そして俺の身体は、全てを吸いだされることを、肯定した。 こんな気持ちのいい終わりなら、受けいれてもいいと思った。 そう、あとは最後まで、永遠に、永遠に、この快楽を感じていればいい。 それは幸せだ、と思った。

「ここまでね。」

ふいに俺のものから口を離し、女は言った。 同時に俺を包んでいたゼリーが突如として俺を開放した。 寒い。なんてことだ、外はこんなに寒かったのか。 ゼリーはずるずると蠢き、俺から遠ざかっていく。 あのなかに、あのなかにもう一度入らなければ。 そして、あの快感を…。

しかしあの赤いゼリーは女のスカートの中へと消えていった。 女が口を開く。

「さあ、選ばせてあげる。 貴方はもう一度、この寒い世界でこんな小さな店を続けるの? それとも…、あの世界で私に身を任せたい?」

俺の答えは決まっていた。


荒井・二、完

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